ワクチン接種が進んできましたが、ワクチンと個人の体調、接種後の感染リスクにはどのような関係があるのでしょうか。
順天堂大学大学院 医学部 客員教授の太田成男先生がご登壇して、「ミトコン活で“細胞力”を高めて免疫を整える」オンラインプレスセミナーが7月1日(木)に開催されました。
【ポイント】
・そもそも免疫はどのように働いている?
・免疫システムの働きにはミトコンドリアがカギに!
・ワクチンの効果を高めるには1日3分の○○が効果的!今やるべき新習慣を紹介
ワクチンの有効率に油断は禁物
日本において接種が進んでいる各社ワクチンの有効率はどれも95%前後と極めて高い数値が報道されていますが、イギリスでは、ワクチン接種率が高く4月末の時点では1日の感染者数が2千人を割ってきましたが、6月後半に入って1万人を超え、再び上昇傾向が続いています。
「ワクチン効果や個人の免疫力によって感染リスクの違いが出てくるため、ワクチン接種後も引き続き 免疫強化対策が必要です」と、日本医科大学名誉教授の太田成男先生は話します。
年齢が高くなるごとに、ワクチン効果が弱くなる可能性
今年6月、千葉大学病院の研究でファイザー社のワクチン接種後の抗体価が発表されました。
男女ともに年齢とともに抗体価は下がり、60代では20代の6割程度になっています。ワクチン接種は感染対策に必要なことですが、打ったからといって油断は禁物です。ワクチンの種類、年齢や免疫力の低下などにより、ワクチン効果に違いがでることがあります。
37兆個といわれる人間の細胞の中には、それぞれミトコンドリアという細胞小器官があります。実はこの小さな器官が免疫に大きな役割を果たしていることが、近年の研究でわかってきました。
ミトコンドリアは、生命活動に必要なエネルギーを作り出す大切な役割を果たしています。エネルギーがなくては、すべての細胞は働きません。
〜ミトコンドリアと免疫〜
1 ミトコンドリアは免疫システムを作動するスイッチ
「ミトコンドリアがウイルスを感知して、免疫システムを作動するスイッチの役割を果たしていることが最近の研究でわかりました。細胞内に入ってきたウイルスのRNAを発見すると、小胞体という別の細胞小器官と合体します。すると、スイッチがオンになってサイトカインという物質を放出し、免疫細胞の出動を命じます」
2 エネルギーを作り出して免疫細胞の力を高める
「ミトコンドリアはすべての体のほとんどの細胞の中にあり、エネルギーを作り出しています。 免疫細胞の中にも存在し、細胞を動かしたり分裂するためのエネルギーを作っています。 つまり、ミトコンドリアが元気でエネルギーがたくさん作られれば、免疫細胞は活発に活動し、エネルギーが少なければ活動は低下してしまいます」
3 ウイルス感染した細胞を殺して細胞間の感染拡大を防ぐ
「ウイルスは、RNAという遺伝子が膜につつまれた状態です。ウイルスが細胞内に入ると、 膜をとってRNAだけになり、細胞の増幅装置を利用してRNAを増やします。増えたRNA は細胞外へ飛び出し、他の細胞でまた同じことを繰り返します。ウイルスに感染した細胞は免疫細胞のキラーT細胞やNK細胞に殺されますが、ミトコンドリアはアポトーシス (細胞死)を命じて、ウイルスを閉じ込めたまま死に至らせることができます。そして、死骸の中のウイルスが飛びちらないよう、免疫細胞のマクロファージに食べてもらいます」
4 ミトコンドリアを元気にしておけばワクチン効果にも影響
「抗体を作るのは、免疫細胞のB細胞の役目です。B細胞は、形質細胞に分化して抗体を産生します。ミトコンドリアの量が多いほど、質の高い抗体をたくさん産生してくれます。ここでは、ヘム鉄やミトコンドリアが出す活性 酸素も関与しています。
ワクチン摂取においても、同じ流れになります。つまり、ミトコンドリアを元気にしておけば、抗体価をあげることにつながると考えられます」
5 免疫におけるミトコンドリアの8つの役割
「免疫におけるミトコンドリアの働きは、現在のところ8つ発見されています。しかも免疫システムにとって、大変重要なポイントで働いています。ミトコンドリアを元気にしておけば、免疫システムが正しく働き、免疫細胞の力もアップします」
【ミトコンドリアの役割】
1) 免疫システム始動スイッチを入れる
2) 体温を上げて免疫システムを活性化
3)感染した細胞を細胞死(アポトーシス)へ導く
4) 活性酸素を産出して免疫細胞をサポート
5)サイトカインを放出
6) 免疫細胞のエネルギー産生
7) B細胞の抗体産生をサポート
8) キラーT細胞によるアポトーシスをサポート
ワクチン摂取の前も後も、ミトコンドリアを元気にしておくことが、感染予防につながることは明らかです。今すぐ始めたい生活習慣など、②へ続きます!
太田成男(おおた しげお)先生
日本ミトコンドリア学会名誉理事長。日本医科大学名誉教授。順天堂大学客員教授。
1974 年東京大学理学部卒業。1979 年、東京大学大学院薬学系研究科博士課程を修了した後、スイス・バーゼル大学バイオセンター研究所研究員、1985 年自治医科大学講師・助教授を経て、1994 年より日本医科大学教授、2003 年日本医科大学大学院教授、2015 年日本医科大学 先端医学研究所教授を経て、2017 年 3 月退官。30 年以上にもおよぶ研究から、ミトコンドリアに備わっている機能が心身の健康と密接にかかわっていることを発見する。ミトコンドリア研究の第一人者であり、日本ミトコンドリア学会名誉理事長、日本 Cell Death 学会評議員などを務めている。作家・瀬名秀明との共著「ミトコンドリアと生きる」、「体が若くなる技術」など、著書多数。