
日本では「お風呂に入る」といえば、まず体を洗い、湯船につかって温まる――というスタイルが一般的。
最近はスマホを持ち込む人もいますが、湯船につかっている間は、あえて何もしないというのが圧倒的です。ぼーっとしたり、今日一日のことを考えたり、ただ温かいお湯に身をゆだねるだけ。そうした日本人にとってはごく自然なバスタイムも海外に目を向けると日本独特だと言わざるを得ません。
海外では、ワインを飲んだり、本を読んだり、シャワーで歌ったり、自宅のバスルームをスパのように演出したり……。
「お風呂=体を洗って温まる時間」と考える日本人からすると、「え、そこでそれするの!?」と驚く習慣もあります。
今回は、アメリカ、イギリス、イタリア、フランス、韓国、オーストラリア、フィンランドの7か国から、日本とはちょっと違うバスタイム文化を紹介します。
①【アメリカ】お風呂でワイン!? バスタイムを「自分へのご褒美」に
アメリカのバスタイムで特徴的なのが、「お風呂=自分を甘やかすための時間」という発想です。
日本では入浴というと、健康や清潔、冷え対策などの実用的な意味合いも強いもの。一方、海外のセルフケア文化では、バスタイムそのものを「Me Time(自分のための時間)」として楽しむスタイルがよく見られます。
そこで登場するのが、キャンドルやバスソルト、音楽、読書、そしてドリンク。
なかでも海外のバスルームのイメージとして印象的なのが、バスタブの横にワイングラスを置いて、ゆっくりお湯につかるスタイルです。
アメリカ人女性がみんなお風呂でワインを飲んでいるわけではありませんが、セルフケアのバスタイムを演出するアイデアとして、ワインやドリンクを添えるスタイルは定番的なビジュアルのひとつ。
日本人なら「入浴後に飲んだ方がいいのでは?」となりますが、ポイントは「入浴のためにワインを飲む」のではなく、「自分のためのリラックスタイムを、お風呂で丸ごと楽しむ」という感覚です。
照明を少し落とし、キャンドルを灯し、好きな香りのバスアイテムを使って、スマホから離れる。
日本の「湯船につかって疲れを取る」と似ているようでいて、海外ではそこに「自分をもてなす」という要素が強く加わっているのが面白いところです。
②【イギリス】お風呂で本を読む! バスタブが「一人の読書時間」に
イギリスのバスタイムといえば、「バスタブで本を読む」という過ごし方が印象的です。
日本でもお風呂で読書をする人はいますが、海外ではバスタブにゆったり浸かりながら本を読むことが、リラックス方法のひとつとして紹介されることがあります。
特にイギリスでは、シャワーだけで済ませるのではなく、バスタブでゆっくり過ごす文化が比較的身近。
そのため、バスタブは単に体を温める場所ではなく、「一人になれる場所」としても機能します。
リビングにいると家族に話しかけられる。スマホを見ていると仕事やSNSが気になる。でも、バスタブの中ならしばらく一人になれる。
そんな環境で、本を開いて静かに過ごすわけです。
日本人からすると「本を濡らさないの?」と気になってしまいますが、海外ではバスタブ用のトレーなどを使い、本や飲み物を置いてバスタイムを楽しむアイデアもあります。
つまりイギリスのバスタイムは、「入浴しながら読書する」というより、バスタブを小さなプライベート空間として使う感覚に近いのかもしれません。
忙しい日常から少し離れて、自分だけの時間を確保する。
そんな「お風呂=一人時間」という考え方は、日本の湯船文化とも意外と相性がよさそうです。
③【イタリア】シャワーで歌う! 「洗うだけじゃない」シャワータイム
「お風呂で歌う」と聞くと、日本でも「あるある」と感じる人がいるかもしれません。
しかし、イタリアではシャワーで歌う人がかなり多いという興味深い調査があります。
イタリアの調査では、75%がシャワー中に歌うと回答。特に女性に多い傾向が示されています。また、67%がシャワー中にラジオを聴くと回答しており、シャワータイムに音楽を取り入れる文化がかなり身近であることが分かります。
さらに、46%はシャワー中に独り言を言い、56%はシャワー中にムダ毛処理などのボディケアをすると回答。
つまり、シャワーは単純に「体を洗う場所」ではありません。
歌う、音楽を聴く、ボディケアをする――。
一人で過ごすシャワータイムを、ちょっとしたエンターテインメントやセルフケアの時間として使っているのです。
特に「シャワーで歌う」という行為には、気分転換の意味もありそう。
お気に入りの曲を口ずさみながらシャワーを浴びれば、それだけで仕事モードからプライベートモードへ切り替えられます。
日本でも「お風呂で歌う」という習慣はありますが、イタリアの場合は、シャワーそのものがよりアクティブな「自分時間」になっているのが特徴的です。
④【フランス】お風呂は「香り」を楽しむ時間
フランスと聞くと、ファッションやコスメだけでなく、「香り」の文化をイメージする人も多いのではないでしょうか。
そんなフランスでは、バスタイムも「体をきれいにするだけ」というより、香りやテクスチャーなど、五感を楽しむ美容時間として考えることができます。
実際、フランスのビューティーブランドでは、シャワーやバスで使いながら肌に香りを残すボディオイルやバスオイルなどが数多く展開されています。
日本の場合、入浴剤というと「疲労回復」「温浴効果」「保湿」など機能面から選ぶことも多いもの。
それに対してフランス的なバスタイムでは、「今日はどんな香りに包まれたい?」という感覚も重要になってきます。
ラベンダー、ローズ、シトラス、ウッディ系……。
香りを選び、その日の気分に合わせてバスタイムを演出する。
お風呂を「美容と感覚を楽しむ小さな儀式」に変えてしまうところに、フランスらしさを感じます。
⑤【韓国】チムジルバンで一日過ごす! お風呂が「レジャー施設」に
日本人が特に驚きやすいのが、韓国の「チムジルバン」文化です。
チムジルバンは、韓国のサウナ・温浴施設の一種ですが、日本の銭湯やサウナだけをイメージすると、そのスケールの違いに驚くかもしれません。
韓国観光公社によると、チムジルバンは入浴やサウナだけでなく、休憩やさまざまなエンターテインメントを一つの施設で楽しめる「レジャー施設」として発展しています。サウナ室のほか、休憩スペース、スナックバー、ゲームルーム、マッサージチェア、シアターなどを備える施設もあります。
つまり、チムジルバンは「お風呂に入って帰る場所」というより、友達や家族と一日ゆっくり過ごす場所という感覚に近いのです。
汗をかいたら休憩し、またサウナに入り、お腹が空いたら食事をする。
休憩スペースで寝転んだり、友達と話したりすることもできます。
施設によっては長時間滞在できるため、「今日はチムジルバンに行ってのんびりしよう」という休日の過ごし方も成立します。
日本にもスーパー銭湯やスパ施設がありますが、韓国ではこうした温浴文化がより「娯楽」「社交」「休息」と一体化しているのが特徴です。
美容目的だけではなく、「みんなで一日楽しむ場所」。
これが韓国のチムジルバンの面白さです。
⑥【オーストラリア】広いバスルームを「自宅スパ」に! 入浴中のフェイスマスクも
オーストラリアのバスタイムで注目したいのが、バスルームそのものをリラックス空間として楽しむ「ホームスパ」的な発想です。
オーストラリアの住宅では、ゆったりとしたバスルームやバスタブを活用し、入浴そのものをセルフケアの時間として楽しむスタイルが見られます。
日本の一般的な浴室は、洗い場と浴槽がコンパクトにまとまった機能的な空間が多いのに対して、海外のバスルームには、バスタブを中心にゆったり過ごせるような空間づくりもあります。
そこで登場するのが、バスソルトやキャンドル、ボディケア、スキンケアなど。
「お風呂に入る」というより、自宅で小さなスパ体験をつくる感覚です。
そして、そのホームスパ的なバスタイムに組み合わせられるもののひとつがフェイスマスク。
オーストラリアのスキンケアブランドKosmeaは、顧客の多くがフェイスマスクをバスタブやシャワーで使用していると紹介しています。また、同ブランドには「フェイスマスクをつけてバブルバスを楽しむ」という使い方を提案している商品もあります。
さらにオーストラリアのブランドには、そもそも「バスタイム用」として設計されたシートマスクや、フェイスマスクとバスソークをセットにした商品も登場しています。
日本でもフェイスマスクはおなじみですが、イメージとしては「お風呂から上がって、化粧水や美容液と一緒に使う」ことが多いもの。
一方、ホームスパ的な発想では、バスタブに浸かっている時間そのものを美容時間にしてしまう。
お湯につかる、香りを楽しむ、フェイスマスクをする、音楽を聴く……。
入浴時間と美容時間を別々にするのではなく、一つの「セルフケアタイム」としてまとめてしまうところがポイントです。
⑦【フィンランド】サウナは意外と禅に近い!? 静かなリラックスタイム
フィンランドといえば、もちろんサウナ。サウナの中では、家族や友人との会話を楽しむなど、コミュニケーションも行われますが、意外にも何かもせずにのんびりする時間を過ごす人が多いのでがサウナです。
フィンランドの公式情報でも、サウナはリラックスしたり、考えを整理したり、日常の悩みから離れたりする場所として紹介されています。
日本の温泉のように、「静かにしなければいけない」というルールはなく、ただ熱や蒸気を感じながら、ただそこにいる時間そのものを楽しみます。
これは、日本人が湯船につかって「ふーっ」と息をつき、何もせずにぼーっとする感覚と少し似ています。
スマホも仕事もいったん置いて、温かさの中で頭を空っぽにする。
日本では「湯船」、フィンランドでは「サウナ」。
場所は違っても、「何もしないことが贅沢」という感覚には、意外な共通点があるのかもしれません。
まとめ|世界のお風呂は「洗う場所」から「自分を整える場所」へ
こうして比べてみると、世界のバスタイムは実にバラエティ豊かです。ワインやキャンドルなどを取り入れて「自分へのご褒美」タイムにしたり、一人時間を楽しんだり。セルフケアやリフレッシュがメインだったり。
「お風呂で何をするか」には、お風呂に何を求めているのかという価値観の違いがあります。
日本では「体を温める」「疲れを取る」「リラックスする」。
アメリカやオーストラリアでは「セルフケア」。
イギリスでは「一人の時間」。
イタリアでは「気分転換」。
フランスでは「美容や香り」。
韓国では「レジャーや人との時間」。
そしてフィンランドでは「日常から離れて、自分を整える時間」。
そう考えると、日本の「湯船につかって、何もしない」という習慣も、実はかなり贅沢なセルフケアなのかもしれません。
世界のお風呂事情を知ると、いつもの入浴時間も少し違って見えてきそうです。



